「坂の街・尾道」の景観を活かしたまちづくり
2008年 10月 29日
尾道市は、瀬戸内海に面し、古くから港町として栄えたまちだ。


それぞれの時代に豪商を生み、彼らが多くの神社仏閣の寄進造営を行った。

渡船が行き交う尾道水道、尾道三山の山裾に点在する多くの寺院、古くからの市街地。それらは長い歴史の中でつくられた尾道ならではの美しさを醸し出している。


また近年では、小津安二郎や大林宣彦の尾道三部作などにより、「映画のまち」、「坂のまち」としても有名だ。
そんな尾道市が、この海辺の美しい景観を活かしたまちづくりを進めるために、先進的な取り組みを行っている。
具体的には、平成19年度にしくみとして確立した以下の「4点セット」と言われる制度の運用だ。
・県景観条例(しまなみ海道沿線エリアの建物等の届出制度)
・景観計画(景観法に基づく届出と罰則規定)
・景観地区(景観計画で重点地区としたエリアを、都市計画で景観地区に指定)
・屋外広告物条例(広島県から条例制定権を受け制定)
このような取り組みのきっかけは、2度のマンション建設問題だ。
特に平成17年に尾道駅東側へのマンション建設計画が持ち上がった際には、23,000人を超える市民のマンション建設反対の要望書が市に出された。尾道の景観保全に致命的な影響を与えるとの判断から、市は最終的に底地を事業者から5億4千万円で買い取る形で決着した。

上の写真の赤い屋根の駅の右側がマンション計画があり、市が買い取った場所

反対側から見た計画地
このように、それまでの任意の景観条例等では、合法的に建築行為を申請されると景観上の観点からは、これを拒むことができなかったため、景観法を活用して景観施策を立て直すこととしたそうだ。

具体的な対策としては、建物の高さ制限がある。特に尾道らしいと言われる尾道水道対岸の向島から見た千光寺山を背景とする眺望景観の確保を基本に考えたそうだ。

つまり、主要な眺望地点から見た場合、建物によって、千光寺山の中腹(標高約40m)以上がさえぎられることがないことを基準に、景観地区内に建てられる建物の高さの最高限度を15m~27mまでの中で設定している。これは5階~9階の建物に相当する。

向島から見た千光寺山側の景観
しかし、この建物の高さ規制は、都市計画法の用途地域からすると、かなり押さえられた高さだ。
景観地区の多くは商業地域であり、建ぺい率は80%、容積率は400%なので、敷地面積等との関係もあるが、建てようと思えば、10階以上の建物も建てられる。
そのあたりの合意形成について質問すると、市民の皆さんに次のような説明で、納得してもらったそうだ。
「尾道らしい景観を守ることが、皆さんの土地の資産価値を高めます。商業地域の基準に従って建てたら、資産価値はどんどん下がります。だから小さく建てることは、皆さんの財産を守ることになるのです」
富士市では、果たして「富士山の景観を守ることが皆さんの財産を守ることにつながります」という理屈が通るだろうか?理解されるだろうか?
by koike473 | 2008-10-29 23:56 | まちづくり・都市計画 | Trackback | Comments(6)

尾道はまだ1度も行ったことがありません
28年ほど前に新幹線で寝過ごして降りられず博多から東京まで行ってしまい それっきりになっています。いつになりますか?
富士の映画館もどうなるんでしょうか?

何か早く規制したほうが、いいような気がします。
