吉原商店街振興組合で視察 柏崎市(新潟県)
2008年 07月 31日
視察の大きな目的は、「地方都市における再開発の先進事例研修」であり、私は、TMO吉原の再開発部会長ということで、誘っていただき参加した。(もちろん参加費用は自分で負担してです)
今日は、15日(火)に訪れた柏崎の報告。
朝6:00にマイクロバスで出発し、柏崎に着いたのは12:00過ぎ。
柏崎は、ちょうど1年前の7月16日に「中越沖地震」による大きな被害を受けた街だ。
古い木造の建物が連担し、倒壊などの大きな被害を受けた「えんま通り商店街」と、この10年ほどの間に再開発を進め、ほとんど被害がなかった「東本町1丁目商店街」という、隣接する2つの商店街を視察した。


地域のシンボル「えんま堂」
「えんま通り商店街」は、場所によって被害に偏りがある。商店街がゆるやかな丘の尾根のすぐ下に沿って形成されているが、丘の斜面下側、つまり盛土造成した側の商店に被害が集中している。


被害を受け、取り壊された商店敷地
現在、復興計画策定の真っ最中だ。
復興協議会を立ち上げ、毎週水曜日に関係者が集まり、これからのえんま通りの復興計画を検討しているそうだ。

話を聞く吉原商店街の皆さん
この検討の中で、当事者である商店街の皆さんをバックアップしているのが、県内の4つの大学の先生や学生たちだ。
その中心になっているのが、新潟工科大学建築学科の田口准教授(都市計画、まちづくり)だ。

田口氏が、「いきなり再開発計画や、その図面などを持ち出すと、バラバラなまちづくりが勝手に進んでしまうので、復興に向けた考え方を関係者が常に意識できるように、まちづくりのイメージ=復興ビジョンを『言葉』で共有しようとした」という話が印象的だった。
これは、被害があったところと、なかったところが「まだら模様」になっているため、被害にあったお宅は「少しでも早く」、遭わなかったお宅は「まだまだ」というギャップもある中で、あくまでも「これからのまちづくり」が目的であることを忘れず、協調体制の中で「えんま通り」を新しく創り上げていこうという姿勢の表れのような気がした。



また都市計画や建築、デザイン系の学生たちは、検討しやすいようにと、地区の模型を造ったり、1軒1軒のヒアリング調査などを行っているそうだ。
まもまく、ビジョンを踏まえ、具体的な建替え等の再開発プランがまとまるエリアが出てくるようだ。
被害に遭われた商店街の皆さんと、大学関係者の連携プレイの大切さを感じた。
「えんま通り商店街」の後は、「東本町1丁目」だ。
倒壊により歯が抜けた「えんま通り」と、車道、歩道とも幅員が広く、大きな再開発ビルが目立つ「東本町1丁目」は、大きな交差店を境に、とても対照的だ。

平成3年度から13年度にかけ、延長400mの商店街を3つのブロックに分け、再開発を進めたそうだ。

Aブロックの市民交流センター

個別建替えを行ったBブロック

ショッピングセンターを中心とするCブロック
この再開発事業の中心メンバーである柏崎商工会議所の吉田副会頭と州崎中小企業相談所長から話を伺ったが、その要点は以下の通り。

・400mの区間については、中心の道路が都市計画道路として13mの現幅員から19mに拡幅計画があった。実際再開発事業を進めるにあたっては、拡幅に伴う補償費(土地及び建物)の公的な手当てが大きい
・Aブロックは、もともと商工会議所や東北電力、信用金庫などの公的機関が立地していたので法定再開発事業で。Bブロックは、各商店ぞれぞれが建替えを行う個別建替えで。Cブロックは、商業者がまとまり関係機関の出資を募り3セクを組織し、ショッピングセンターを造る、とそれぞれ別の事業手法を採った
・特にAブロックは、上記公的機関に加え、市の出先機関や市民交流センターが床を買ってくれたので事業化がスムーズに進んだ。法廷再開発の基準で建てたビルは、どうしても坪単価が高くなるので、特に地方では、民間企業や商店だけでは床が埋まりにくい。また、高層階のマンションは、柏崎市内で初めての都市型マンションだったこともあり、即日完売だった

Aブロックのマンション
・再開発事業は、10年を目処に完成させなければ難しい。それ以上の年月をかけても実現できないのではないか。10年経てば社会情勢や考え方、そして権利者も代替わりが進む
・行政やコンサルタント、建築士はあくまでもアドバイザー。金を出して造るのは自分達という意識が常に必要。検討期間だった平成3~6年度の4年間は、市等から補助金ももらったが、商店街で毎年5,000千円、計20,000千円を出し、検討会や視察を重ねた。自分で金を負担しなければ本気にはならない
・地方都市では、テナントも自分達で足を運び、捜さなければ、埋まらないと思う。Cブロックのショッピングセンターは、開業4年目で営業が立ち行かなくなり、民事再生法の手続きをとった。10店以上を入れ替えたが、現在も90%の床が埋まっている。一度床が空き始めると、あっという間に抜けていくので、常に埋まっている状態にしておくのが大変
説明いただいた2人は、現在は相当の立場に就かれているが、当時は担当者として、また現在は全体の責任者として重責を担っている。
それだけに、「自分達で金を出さなければ本気にはならない」は重い言葉だった。
by koike473 | 2008-07-31 23:54 | まちづくり・都市計画 | Trackback | Comments(0)