会派視察1日目 「宇部方式」と呼ばれる独自の公害対策
2008年 01月 24日
山口県宇部市を訪問したが、ここでは以下の3項目についてヒアリングした。
宇部市役所 昭和33年建築、築50年の建物だ
(1)「宇部方式」と呼ばれる産・官・学・民の協働による独自の公害対策について
(2)産業観光(CSR)ツーリズムについて
(3)環境保全センター焼却施設(流動床式ガス化溶融方式)について
中でも、(1)の「宇部方式」と呼ばれる公害対策について報告したい。
宇部市は、古くから石炭の街として栄え、その後は化学・セメント工業に支えられた臨海工業都市として発展してきた。
しかし、戦後、これらの工場の煙突から出る「ばいじん」は、多量であり、窓も開けられない状態だったそうだ。
そうした中で、昭和24年には市議会内に「宇部市降ばい対策委員会」が設置され、実態調査や、産・官・学・民による検討と対策が始まった。
当時、降下ばいじん量は、55.86t/km2/月を記録し、「世界一灰の降る街」と報じられた。
またここで言う「学」とは、市内にある山口大学医学部だ。特にここの公衆衛生学の先生が、市民の健康対策の重要性を訴え、この宇部方式の取り組みをリードされたそうだ。
そして10年後には、降下ばいじん量は1/3に減った。こうした中で、昭和32年に設定した宇部市のばいじん濃度(1.2g/㎡)は、昭和37年に制定された国の「ばい煙排出規制法」の基準値に採用されるなど、先駆的な取り組みを進めてきた。
更に驚くことに、このような取り組みの結果、現在まで宇部市では、公害病認定患者が一人も出ていない。
ひるがえって、富士市のことを考えてみると、公害問題が顕著になり始めたのは昭和40年代に入ってからだ。
そして市に担当係(経済部開発課公害係)ができたのも41年11月、議会に公害対策特別委員会が設置されたのが42年5月だ。
問題の発生時期が15年ほど違うが、宇部市における取り組みの速さに驚くばかりだ。
またこうした先駆的な取り組みが評価され、平成9年には、国連環境計画から「グローバル500賞」を受賞している。
現在の宇部市の煙突 富士市と似たような景色だ
ヒアリングした中では、行政と企業の間におけるきめ細かな取り組みが印象に残った。
・「環境保全細目協定」の締結・・・工場の一つ一つの煙突、排水口ごとに排出量の協定を結ぶ
・「事前協議制度」の確立・・・工場の新増設にあたっては、法律の手続きの前に、市に協議し、現在の環境負荷以上に負荷を排出しないような対策を講じるよう協議・指導する
これらについては、資料を送っていただくようお願いしてきた。富士市にとっても、参考になる点がまだたくさんあるはずだ。
by koike473 | 2008-01-24 23:18 | 環境 | Trackback | Comments(0)