東京理科大久喜キャンパスの全面撤退に学ぶ 常葉大富士キャンパスと周辺の諸問題
2016年 08月 10日
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今日は、昨日に続き、会派で視察した報告。
3日(水)は、久喜市(埼玉県)に「東京理科大経営学部撤退の経緯と今後の跡地利用」について伺った。
目的は、常葉大富士キャンパスの撤退が現実のものとなりつつある富士市に、久喜市の取組みを参考にさせていただこうとの考えだ。
1 東京理科大経営学部の誘致、開学、撤退の経緯
・久喜市は、埼玉県の北東部に位置し、都心から電車で1時間、自動車は東北自動車道、圏央道のICがある人口15万人の街だ。
・平成元年から東京理科大の誘致活動を開始し、平成5年に新しい久喜キャンパス(経営学部)が開設された。
・この間、久喜市では用地取得、校舎建設に関する補助金を30億円、周辺道水路整備等に10億円支出してきた(下の写真は取り付け道路)。
・この段階で用地、建物は大学側の所有となったが、撤退した場合の返還条件等は設けなかった。
・1学年240人、計約1,000人以上の学生・教職員がいた。
・しかし、平成23年に突然、理科大側から神楽坂キャンパス(東京)に全面移転したいとの申し出がなされた。
・大学側との交渉の中では、一旦は「久喜キャンパスは1年生用キャンパスとして残す」となったものの、「教育、経営上の観点から28年3月いっぱいで神楽坂に全面移転する」こととなった。
・最終的には、平成27年に大学側からキャンパス敷地の40%と建物(校舎等)の80%を久喜市に無償譲渡(簿価で資産総額約50億円)し、残りの敷地60%(グラウンド、駐車場等)を物流会社に売却することでまとまった。
・ただし、キャンパスは市街化調整区域にあるため、久喜市では特例的に総合計画、都市計画マスタープランでのキャンパスエリアの位置づけを改定(変更)するとともに、物流施設建設を前提とした都市計画法に基づく地区計画の策定を進めている。
・また譲渡を受ける40%の土地と80%の建物の今後の利活用については、庁内に3名の特命職員を配置し、市民、議会の意見も聞きながら活用計画の策定を進めている
・久喜キャンパスは、予定通り本年(28年)3月に閉鎖され、現在は無人の状態。
2 富士市(常葉大富士キャンパス)と久喜市(東京理科大久喜キャンパス)の比較
富士市と久喜市の似通った点としては、
・市をあげての誘致と、その開学時期(常葉大は平成2年、理科大は平成5年)、撤退表明時期(常葉大は平成27年、理科大は平成23年)
・いずれも撤退の理由は、18歳人口が減少する中では、学生にとっての魅力確保、経営上の効率性等の観点から、都心あるいは県内拠点に集約したいとの考え方
逆に異なる点としては、
・「地域密着型大学」(常葉大:富士市)と「全国規模大学」(理科大:久喜市)
・具体的には、地元学生が多く、学部も富士山周辺をフィールドにしている常葉大に対し、全国から学生が集まり、地元出身者はごく少なく(東京の大学へ1時間で通えるので)、学部も経営学部で机上の研究が大半で久喜にある必要性は低い
等があげられる
3 久喜市を視察した中での富士市の今後の取組みについて
・18歳人口が減少する中で、大学が生き残りをかけて拠点への集約・再編を図る動きは、残念ながら止められないと思う
・富士市としては、以下の2点から検証・検討すべきだと考える
・一つは、常葉大富士キャンパスが約25年間で富士市に培ってきた実績とその評価、そして今後の関係だ
・市政、教育、産業界への人材、研究成果等の反映はどのようなものがあったか。
・特に富士山周辺の環境や防災、観光等の面で地域密着型の研究や活動を進めてきた実績は大きなものがあるだろうし、それを踏まえた今後の富士市との関係はどう継続できるか等
・もう一つは、富士キャンパス跡地の活用のあり方
・富士市との覚書では、「20年間以内の廃校の場合は用地返還」とされているが、既に30年近くが経過し、敷地、建物とも全て常葉大側の所有となっている
・一方、富士キャンパス南側の旧富士ハイツ跡地については、市は民間宿泊施設の誘致を進める考えだ。
・また先日、離接する運動公園体育館(勤労者体育館)は耐震上の懸念から、10月から使用を止めることになり、市営温水プールも熱源の関係から、新環境クリーンセンター整備に伴い閉鎖の方向性が示されている。
・これらエリア一帯は、総合計画、国土利用計画において「スポーツウエルネス交流ゾーン」と位置付けられている。
・常葉大キャンパス跡地だけでなく、これらも含めた一体的な整備、活用の検討が必要だと思う
・しかしながら、キャンパスは大学のものだ。
・交渉が重要だが、久喜市のヒアリングの中で「議会の動きがとても大きかった」という発言があった。
・久喜市議会は、理科大との交渉経過の中で2度「議会決議」を行い、大学側に提出している。
・富士市議会としても、市当局と連携しつつ、それこそ「オール富士市」でこの問題に当たるとともに、エリア一帯の効果的な活用に結びつけていかなくてはならないと考える。
by koike473 | 2016-08-10 07:41 | Trackback | Comments(0)