日本初のBRT「かしてつバス」(茨城県石岡市)の視察 その2
2012年 11月 01日
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今日は、先週の26日(金)に議会の建設水道委員会で視察した「鹿島鉄道跡地バス専用道路化(BRT)事業」のヒアリングの報告。
鹿島鉄道が廃線になり、バス専用道となるに至った経過を順に説明すると以下の通りだ。
・廃線になった理由は利用客の減少もあるが、すぐ近くの航空自衛隊百里基地に燃料を運んでいた貨物輸送がタンクローリーに転換となったため、貨物売り上げの年間1億円がなくなったことが大きい(岳鉄と同じ構造だ!)
JR石岡駅に隣接するかつての燃料基地スペース
・平成14年から5年間、周辺4市町で1.5億円/年、国県も計0.5億円/年の補助金を支出し支えたが、その後の展望が見えず、17年度末に鹿島鉄道側から「18年度末をもって廃止」の表明。引き継ぐ事業者(鉄道会社)を公募したが手は上がらなかった
・鉄道が廃止となった19年度からは、並走する国道355号を走る代替バスを走らせたが、鉄道時に比べ利用者は4割程度にまで減った
・平成21年から鉄道路線を市道(バス専用道)として整備し、22年8月30日からBRTとして実証運行を開始した
・バス専用道に切り替えるための整備費として約8.3億円かかったが、その内訳は、
・用地費…鹿島鉄道から無償譲渡(これはかなり大きいのでは?)
・道路整備費…5.8億円(線路撤去費含む)
・付帯施設(信号、バス停等)整備費…0.7億円
・バス車両購入費…0.7億円
・その他(調査設計費等)…0.9億円
などであり、その約半分は国等からの補助金を充てている
・BRTになってからは、定時性、速達性が確保されたことから利用者が6割にまで戻ってきた。アンケートでは「鉄道よりも良い」という人が多い(59%)が、利用者が今以上に増えないのは、沿線の高校が1校廃校になったことなどが大きい
・実証運行に当たっては、22年度670万円、23年度560万円の補助金を支出したが、本格運行となった24年度からは支出していない
・バスを運行するバス会社(関鉄グリーンバス)は、「BRT運行区間を含む鉾田市方面までのバス運行で考えれば収支は楽ではない」
以上の意見交換でヒアリングは終了した。
ここで改めて岳鉄問題も踏まえながら考えると、私の感想は以下の通りだ。
・鉄道の廃線は、たとえ行政が補助金を支出しても、鉄道側の意向(廃止届の提出)によってかなり「あっけなく?」決まってしまう
・BRTは、市道として市が整備管理し、そこを民間のバスが走るという上下分離方式だ。鹿島鉄道時にも上下分離、3セク方式を検討したそうだが、これらの方式としなかったポイントは何だったか(そこまで深く伺えなかった)
・かしてつバスの路線は橋梁が1カ所、それも小さな河川だったのでボックスカルバートで対応できたが、仮に岳鉄をBRT路線にしようとした場合、相当数の橋梁新設、それもボックスでは対応できないものが大半で工事費が増しそうだ
・また鉄道敷の幅が狭い区間や見通しが悪い曲線区間が多く、物理的にそのままの転用が可能かどうか
・岳鉄は、朝の通勤時間帯には1便で100人以上を運んでいる。仮にBRTとなった場合でも対応可能か
・岳鉄の路線は市内公共交通網の基軸となる路線だ。仮にBRTとなった場合、基軸路線への組み込みや枝線となる他のバス路線との接続はどうなるか
・かしてつバスは、沿線の高校が廃校になったことが利用者が戻らない原因の一つだがそれだけか。利用者にとって鉄道とBRTの満足度の違いは何か
・岳鉄が鉄道だから有しているメリット…存在効果、環境改善効果との比較はどうか 等々
視察した議員それぞれが、それぞれの感想や思いを持った。
私としては、今後の岳鉄、そして富士市の公共交通網全体のあり方を考える上で、このBRT方式、また岳鉄の上下分離方式を含めた検討を進めていくべきだと思う。
by koike473 | 2012-11-01 08:14 | 公共交通・自転車 | Trackback | Comments(2)
今回の視察をしたことは非常にタイムリーだと思います。
今回の視察がすぐに役立つかどうかわかりませんが、
色々な事例を調べることは意義あることです。
「沿線の高校が1校廃校になったことなどが大きい」と
ありますが、小川高校のことでしょうか?
廃校の学生のうちどのくらいの人数が鹿島鉄道を利用して
いたかが分かると利用者数の表の見方が変わると思います。