夕張市の視察を通じて感じた「自治体の今後」 その2

 今日は、夕張の視察報告の2回目。

 夕張市の現状は、非常に厳しい。
 人口は1/10に減った。
 計14の小中学校も小中各1校への統合、市税(市民税、固定資産税)、公共料金の値上げ、市の職員給与削減等々。

 市民会館等の各種公共施設は、基本的に金額を伴わない指定管理者による運営(指定管理者は使用料等をとって運営費に充てる)だ。

 市役所も、空いたスペースは銀行に貸し出すなど、少しでも金を稼ごうとしている。
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 しかし(写真を撮らなかったが)、市役所の玄関の階段はタイルが剥がれたままだ。
 市道も舗装の修繕等はほとんど行なうまで手が回らない。

 市ではこのような経費削減・収入増加策に加え、今後は、広い市域の中で、住宅や役所、商業などを中央の地区に集約する「コンパクトシティ」化を本格的に進めていく計画だそうだ。
 つまり、分散して市内各地区に生活している皆さんに、中央の地区に移住してもらうわけだ。
 市内全部で4,000戸あるものの、少ないところでは40戸に1~2戸程度しか入居していない市営住宅(かつての炭鉱住宅)、道路、上下水道の維持管理の負担を考えたら、もはやそうせざるを得ないというところだろう。
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 市営住宅とは言え、よそに移住することに合意を得て進めていくのは、住んでいる方の気持ちを考えれば大変難しい調整が予想される。
 このように切り詰め、街を集約しながら、320億円以上の借金を今後18年かけて還していかなくてはならない。

 しかしこうした夕張の状況や取り組みは、日本全国の市町の「明日の姿」なのかも知れない。
 富士市も当てはまることが多くある。
  ・製紙産業が主力だが、業界の世界的な戦略の中では、大手企業はいつどうなるかわからない。
  ・広い市域を有し、道路、上下水道をはじめ多くの社会資本が建設され拡がり、現在も拡張中だ。
 昨年から一般質問や様々な場面で話したり、議論してきた「企業が撤退しないような産業支援」、「社会資本の長寿命化」、「今後数十年をかけつつも、しっかりした方針に基づく確実なコンパクトシティへの取り組み」の必要性を改めて感じた。

 夕張は、短い数十年の中で、このような「浮き沈み」を経験しなければならないことが大変だ。

 しかし、市民の皆さんは元気だった。
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 「テレビやニュースでは、もう先が全くないような映像とコメントばかり流されます。確かに生活は大変になった面はありますが、十分生活していけています」
 「高齢者が出る幕が多い。高齢者がいきいきと暮らせる日本のモデル都市が目標です」
 「夕張が好きだから、市の借金を還し終わるまでがんばろうってみんなで言ってます」
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 市役所前の植え込みでは、ボランティアグループの皆さんが、冬の「雪囲い」をはずす作業をしていた。
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 また、今年の秋には大手漢方薬メーカーの工場進出も決まったそうだ。

 時間はかかり厳しいが、夕張市民の皆さんには、是非「再生した夕張」の姿を日本中に見せていただきたい。

by koike473 | 2010-05-17 23:38 | 視察・研修・勉強会 | Trackback | Comments(0)  

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