飯塚市(福岡県)の「熟年者マナビ塾」の取組み
2009年 11月 11日

飯塚市は、かつては筑豊炭田の中心都市として栄えたまちだ。また前総理大臣・麻生太郎氏の出身地としても有名なまちだ。
現在の飯塚市は、平成18年3月に、旧飯塚市と4町が合併して誕生した。
この4町の中の一つ、旧穂波町で平成16年から取り組み始めたのが視察ヒアリングした「熟年者マナビ塾」だ。
「熟年者マナビ塾」は、「熟年者が小学校(余裕教室)に通い、学校の授業時間に合せて自主的に学習したり、学校支援ボランティアとして活動する」ことを通じて、「熟年者の力を学校教育に活かし、児童の健全育成、開かれた学校づくり、学校の活性化、そして熟年者自身の生きがいづくりや健康増進を目的とする」取組みだ。
合併後は、新飯塚市の全小学校区22校で取組みが行われている。
参加している熟年者は、各学校で平均10名、平均年齢70歳、全体で220名、男女比では3:7とのことだ。

熟年者は、週1回学校に行き、学校の授業時間に合わせ「自主学習」と「学校支援ボランティア」を行う。
「自主学習」とは、詩や和歌の朗読、百ます計算、漢字の書き取り、健康リズム体操などの「元気な高齢期を迎えるための脳トレと身体機能維持活動」と、絵手紙づくり、パソコン、囲碁・将棋などの「趣味を拡げるテーマ別相互学習」。

つまり、熟年者の皆さんが自分で学ぶ時間だ。
一方「学校支援ボランティア」は、花壇づくり、図書整理、校舎の修理などの「学校環境整備支援」と、読み聞かせ、丸付け等の授業補助、昔遊びの伝承などの「教育活動支援」。

つまり、小学校の運営を熟年者の皆さんがサポートする時間だ。


富士市でも、総合学習の時間に、地域の皆さんが先生役になり、地域の歴史や自然解説等を教えたりすることがある。
飯塚市でも、総合学習では富士市と同様の取組みを行っており、更にそれ以外に「熟年者マナビ塾」がある。
取組みのポイントは、「学校支援ボランティア」は、「学校側(先生)からの要請があって初めて活動する」ことだそうだ。

あくまでも学校の運営のサポートであり、無理な押し付けはしない。
とは言うものの、教育長さんのトップダウンで取り組んでいる事業なので、全22校で取り組み始めた当初(19年度)は学校の先生側もとまどい(何をどう依頼するか、またその調製時間の確保等)があったようだ。
しかし2年目の20年度には、学校側の授業や施設管理のペースの中で、タイミングよく調整しながら学校支援ボランティアを要請するようになったようだ。
成果としては、
・担任だけでは手が回らないところへ援助していただき、授業の効果が上がった
・塾生の方が学校にいるということで、学校の安全の確保が向上した
・塾生に見ていただくことで、子ども達に適度な緊張感や達成感を感じさせることができた
などが先生側から感想としてあがっている。
また、熟年者の皆さんからは、
・子ども達が目を輝かせて話を聞いてくれたり、「次はこんなことを教えてあげよう」と考えることが楽しい
・地域で子ども達と会うと「マナビのおばちゃん」と声をかけてくれる
・地域で子ども達が危険なことをしている場面に出くわしたとき、顔見知りなので注意がしやすい
などがあがっている。

この取組みは、「学校」を拠点とした学校、こども、熟年者それぞれにとってのメリットは十分予想できた。
それに加え、「学校」での出会いが、「地域」での世代を超えた交流のきっかけになっていることが副次的な最大の成果ではないだろうか。
昔なら当然のようにあった顔のわかる関係が消えつつある中で、新たな「つながり」をつくるきっかけになっているようだ。
全市的な取組みとなってまだ3年目だ。
今後の飯塚市の取組みに注目するとともに、富士市での「学校、子ども、地域の皆さん」がともに取り組むあり方について考えていきたいと思う。
「炭鉱」最盛期の70年以上前にできた「嘉穂劇場」。
1,200人の収容力がある劇場だ。いかに栄えていたかわかる。


現在は、地域の皆さんが設立したNPO法人によって運営されている。
この日も、劇場運営の舞台裏を見学する「バックヤードツアー」の参加者がバスでやってくるとのことだった。
by koike473 | 2009-11-11 02:37 | NPO・市民活動 | Trackback | Comments(0)