「老いる都市」とは? その2
2009年 05月 13日
先日は「人口の高齢化」の話だったが、今日は「都市の基盤施設の高齢化」の話だ。
我が国の都市整備は、昭和30年代以降の高度成長期に急速に行われた。
道路、橋梁、上下水道、様々な公共・民間のビルや住宅などなど。
これらの基盤施設=社会資本の耐久年数は、施設や使用条件等によって幅はあるものの50~60年程度と考えられている。
これらの社会資本の多くが、今後老朽化し、更新の時期を迎え、公共事業における「更新・維持改良費」が急激に増えていく。
一方、人口の減少等により投入できる公共事業費は急激に減少していく。
その結果、新規の社会資本整備余力は急速に縮小し、2020年代には既存の社会資本の維持・更新すら困難となると予測されている。(この図は、「平成17年度 国土交通白書」にも出ている!)
つまり、日本全体では新しい公共事業ができないばかりか、現在ある社会資本の補修等もできなくなる。
松谷氏は「これからは『何を造るか』でなく、『何を残し、何をつぶすか』という時代にならざるを得ない」という言い方をしていた。
この研修会とは別に、4月にインターネットで「下水管1600km耐用超す。年間690億円投じるも、東京23区内交換追いつかず」というニュースを見た。
東京都の下水道管は、現在耐用年数を超えている管が1600kmあり、毎年200kmずつ増えていくが、平均で年間90kmしか交換・改修が進んでいない。
そうした中、下水道管の損傷が原因で起きた道路陥没が毎年1300件発生しているそうだ。
交換・改修できない管が今後どんどん増えていく。
既に東京都の下水道は、2020年代の未来図を現していることになる。
さらに松谷氏は、「人口が減ると、『通勤地獄が解消され、電車の車内で新聞を拡げて読めるようになり、生活にゆとりが生まれる』等の論調もあるが、それは絶対ない。電車に乗る人が減れば1時間に走る本数が減り、車両も両数が減る。そしてその次は廃線です」
連休中に、図書館で2冊の本を借りた。
松谷氏が言っていたとおりだった。
「人口減少 日本経済・金融・社会はこうなる!」は楽観論、「人口減少 新しい日本をつくる」は悲観論だ。
前書では「電車の車内で新聞を広げて読める!」、後書では「ゆとり通勤どころか廃線に」が項目のタイトルだ。
現在の状況を考えれば、バラ色の未来を描くことはできないと私は思う。
松谷氏も言っていた。「人口減少社会では、公共事業を始め、土地の利用の仕方、まちづくりの進め方の基本的な考え方を変える必要がある。私権制限に今以上に踏み込まなくてならない」
現在、多くの自治体で土木施設や公共建築物の「長寿命化」が大きなテーマになっている。
しかしこの研修では、さらにその先(と言ってもわずか10数年先)にある「厳しい社会」を示され、かなり落ち込んで帰ってきた。
by koike473 | 2009-05-13 21:24 | 公共施設マネジメント | Trackback | Comments(0)