富士市も発想を変えるべき 「攻めのFM」 流山市のファシリティメネジメント

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 今日のブログは、ずいぶん前になるが、4月末に視察した流山市の「ファシリティマネジメント(FM)におけるPPPの活用」の話。

 少し(ずいぶん?)長いのですが、視察報告書を、ほぼそのまま掲載しますので、お目通しいただければ幸いです。

1 目的
 全国全ての自治体で、人口が減少し、財政的にも厳しくなる中で、公共施設の維持・更新のあり方が大きな課題になっている。
 富士市でも「公共施設マネジメント基本方針」を策定し、FM(ファシリティマネジメント)に取り組んでいる中で、「公共施設・資産に民間活力を導入して、新たな公共サービスにつなげる」という発想・行動の流山市の取組みを学び、富士市の参考にすることを目的に視察した。
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2 視察(ヒアリング)内容
1)流山市のFMの考え方
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 ・ファシリティマネジメント(FM)と言うと、人口が減少していく中で「どうやって公共施設を減らしていくか」というハード、そして減らす=ネガティブな議論になりがち(富士市でもそんなイメージが強い)
 ・流山市は、東京圏のベッドタウンとしてまだ人口が増加しており、今後の公共施設の維持管理費は、従前とさほど変わらない金額で推移しそうということもあるが、「公共施設・資産に民間活力を導入して、新たな公共サービスにつなげる」という「活用=ポジティブ」な考え方のFMというイメージだ
 ・基本姿勢として、以下の3点が印象的だった
  ①民間事業者からの提案を受けながら進める
     =公民連携(Public Private Partnership)

  ②他の自治体の取組みでいいところは真似ながら進める
     =自治体同士の連携(Public Public Partnership)

  ③できることを、できるレベルから進める
     =小さなことの積み重ねが大きな実になる
 ・特に①、②が「2つのPPP」と言われる流山市の特徴である


2)流山市のFMの具体的な取り組み
  ①デザインビルド型小規模バルクESCO
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   ・ESCOは、「ESCO事業者(民間企業)が省エネルギーに関する包括的なサービス(省エネ診断、設計、改修工事、維持管理等)を提供して省エネルギー効果を保証し、それにより得られる省エネルギー削減額の一部を事業者が報酬として受取る事業」と説明される
   ・要は、これまでかかっていたエネルギー費用の中で、民間の活力を入れることにより設備を更新し、エネルギー効率を上げ、コストを下げることにより、オーナー(自治体)も、ESCO事業者も利益を得るというものだ
   ・富士市でも今年から中央病院でESCO事業の取組みが始まるが、ESCOが成立するには比較的規模が大きな施設でなければ難しいようだ

   ・流山市では、このESCO事業を、
     ・FS調査は、市ではなく(一財)省エネルギーセンターの無料診断を活用する
     ・提案者と協議しながらスキームを構築する(=デザインビルド)
     ・小規模施設(1000㎡以下)には補助金を上乗せする
     ・小規模施設を複数抱き合わせ(バルク=ひとまとめにする、一括する)でESCO事業に取り組むことで、リスク分散による事業リスクの低減化を図る
     というやり方で、コア施設(市役所、図書館、博物館)に加え、5つの福祉会館にもESCOを拡大導入している
   ・13年間で約2.7億円のコスト削減が見込まれる

   ・流山市のFMは、多くの取組みが、このESCOの考え方を基本としており、今もそれが生きているのことだ
   ・つまり、従来の事業・維持管理費の中で、民間のアイデア・スピードを活用し、改善・工夫することにより、これまで以上に質が高い公共サービスを生み出し、付加していくという考え方だ


  ②デザインビルド型包括施設管理業務委託
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   ・従来は、各課が各施設・設備ごとに保守点検業務を発注していたが、事務量、コスト等の全体像がわからなかった
   ・それを財産活用課が一括して発注することにより
     ・スケールメリットによるコスト削減
     ・担当課の事務量の大幅削減と施設運営への専念化
     ・+αのサービス(受託者による施設の定期巡回、緊急対応等)
    が可能となった
   ・受託したのは大手不動産会社(有楽土地)だが、条件として「市内業者活用」を入れたことにより、従来以上に市内業者が業務に参加(下請けだが)できるようになった
   ・3年間で約4千万円のコスト削減と、上記+αのサービスが見込まれる

③まるごと有料広告
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  ・地方自治法が改正され、行政財産の貸付範囲が拡大したことから、余裕・未利用空間を活用し、歳入確保を図ることを目的に取組んでいる
  ・庁舎(市役所)を対象に、施設まるごとを対象に、民間企業から企画提案を受け付けた(デザインビルド)
  ・条件として庁舎案内板の更新を貸し受け者が行うこと
  ・2社から提案があったが、広告媒体種類、場所の提案が異なっていたため、両社の提案を採用
  ・広告場所の貸付料として想定最低価格の2.7倍の値段で貸付できた
  ・従来の番号発券機リース料をゼロにする提案があった
  ・これにより歳入増加(貸出料)、従来かかっていたコストの削減により、5年間で計約1200万円のメリットが見込まれる
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  ・さらにこの取組みを基に、駅の新設自由通路を広告場所として貸付(貸付料確保)し、抱き合わせ(バルク)で3ヶ所の市役所出張所に受付番号発券機設置(無料)を条件にプロポーザルコンペを行った
  ・貸付料は想定最低価格の1.4倍で貸付でき、券売機のコスト削減により、5年間で計約580万円のメリットが見込まれる…バルク型有料広告

④スマート庁舎
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  ・事業者提案制度により「庁舎のレイアウト変更と整備」を新たな財政負担なしで行う
  ・スキームとしては、
    ・庁舎の空いたスペースを介護・福祉事業所に貸し出す(480万円/年)
    ・庁舎管理の包括委託を見直し、300万円/年を安くする
    ・これにより5年間で計3900万円の原資を確保する見通し(従来の支出と  変えなければ)が立ち、その分を提案者(大成有楽不動産)が立て替えることにより庁舎整備の原資を一気に確保できる
    ・市は5か年の債務負担行為を議決してスキームが完成


⑤未利用地の有効活用(防災備蓄倉庫整備事業、野立太陽光)
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  ・土地区画整理事業区域内の未利用地の貸付料を原資に、他の場所(市の防災備蓄倉庫整備計画に則った場所)に防災備蓄倉庫を整備する
  ・貸付料=約860万円/7年=防災備蓄倉庫整備費+固定資産税(貸出地へ建てた建物)
  ・貸出地の草刈り業務委託料が不要になった
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  ・市街化調整区域内の未利用地を太陽光発電事業者に貸付
  ・道路がなく水路に挟まれているため未利用で、売却困難地
  ・貸付料(120万円/20年)+固定資産税(110万円/20年)


3 視察しての所感  ~流山市のFMは『攻めのFM』~
 ・流山市FMの取組みは、まさに「目から鱗」だった
 ・基本的な考え方として、ESCOのスキームを余すところなく活用している
 ・向こう5~10年の間、従来の予算で直営で取り組んだ場合の総額を上回らない中で、民間のアイデア、資金力を活用し取り組む、つまり「新たな財政負担を伴わないスキーム」が基本だ
 ・そしてそれを民間からの提案方式で取り組んでいる
 ・その最たるものが、「現時点で『究極のPPP』」という「事業者提案制度」だ
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 ・これは、行政側で施設やテーマを定めず、「本市のファシリティを使ってできること」について民間事業者のノウハウを生かした提案を求め、採用された案件について、本市との協議(デザインビルド)により詳細協議を行い、諸条件が整った場合には提案者と随意契約して事業化します、という取り組みだ
 ・使えるものは何でも使うという意思があふれ出ている
 ・「攻めのFM」とも言える
 ・その中であれば自由にやっていいというのは、担当者の能力・自律性と、市長をはじめとする市幹部の最後は自分が責任を取るという度量の大きさを感じる(デザインビルド方式は、随意契約の形をとるので)
 ・富士市でも、「守りのFM(廃止、縮小、統合等)」に加え、「攻めのFM」を前面に出した取組みの重要性を実感した

by koike473 | 2016-06-01 06:21 | Trackback | Comments(0)  

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